早起きは三文の徳って本当? 朝型の生活習慣と健康にまつわる話
古来より日本では「早起きは三文の徳」と言われ、現在に至るまでずっと健康の基本として信じられてきました。だけど皆さん、一度はこんな疑問を持ったことがあるはずです。
「でも早く起きればいいってもんじゃないでしょ?」
当然の疑問です。ということで今回は、早起きが本当に健康的なのかという点について触れてみたいと思います。
早起きって本当に健康的なの?
結論から言えば、早起き、ないし「朝型」の生活は健康的な生き方であると言えます。しかし話はそこまで単純ではありません。
考えてもみてください。例えば毎日深夜2時に寝る人がいるとして、毎朝5時に起きるから健康的だ!なんて、とてもじゃないけど言えません。これではそもそも睡眠時間が足りていませんし、疲労の蓄積や睡眠のリズムも壊れてしまいます。ここで言う「早起き」の条件には、根本的に睡眠の時間が充分であることや、朝型の生活を継続していることが含まれているのです。現代版に言い換えるならば、「早寝早起きは三文の徳」となるのでしょうか。言うまでもないですよね^^;
これで結論でも良いのですが、せっかくですから早起きの健康効果についても見てみましょう。ちなみにですが、先に言ってしまうと「早起き」にはデメリットもあります。合わせてご確認ください♪
1.睡眠の質が高まる
2.精神的安定度が高まる
3.学業成績が良くなる
4.肥満率の低下
5.病気リスクの低下
6.疲労感の低下
7.喫煙率が減る!?
8.目的を伴うと睡眠の質を損なう!?
9.子孫繁栄を損なう!?
睡眠の質が高まる
早寝早起きの最も大きなメリットは、「睡眠の質」にあります。睡眠の質についての調査は数多くあるのですが、ここでは一つを紹介。就寝時間別の睡眠の質を調べた調査によると(※1)、薬学部の学生を対象に朝型と夜型の睡眠の質を比較した結果、朝型の睡眠の質が非常に高かった(PSQI準拠)と結論付けています。主に夜型に分類された側は睡眠の時間も少なかったとされていて、充分な睡眠時間を補えていない可能性もありますが、それこそ睡眠の質が低い証拠なのかもしれません。
精神的安定度が高まる
朝型と夜型を比較した時の大きなポイントとなるのが精神的安定度です。一般には「うつ」を対象とした調査が多いのですが、周期的に遅れた睡眠時間を送る人ほど精神的な障害率が上がることが分かっています。一概に根本的な理由が分かっている訳ではないのですが、概日リズムのズレとも大きく関わっているのだとか(※2)。
ただ朝型生活をできない理由が睡眠障害だとするならば、生活を改める、または病院で治療を行う必要があるかもしれません。よろしければ概日リズムについても御覧ください。
学業成績が良くなる
朝型と夜型を比べた場合、それが顕著に現れるのが学業成績だと言われています。こちらも様々な場所で実験が行われているので例を一つ。
スペインで行われた睡眠環境別の学業成績比較にて、朝型の生徒は成績が高く出ることが分かっています(※3)。しかも面白いことに、この結果はより若年層ほど顕著で、12歳から14歳の夜型の生徒は、15歳から16歳の夜型生徒と比べ、学業成績が著しく悪化していたのだとか。要するに、若ければ若いほど早寝早起きが重要であり、夜中に勉強するのがよろしくないということです。
重要なのは、早く寝て、朝起きてから余裕を持って勉強するのが良いという点。小中学生のお子さんを持つ親御さん。夜遅くまで勉強させても、お子さんの成績は上がりませんよ!
肥満率の低下
肥満の原因は様々ありますが、実は寝る時間が重要というのはあまり知られていません。こちらはオーストラリアで行われた就寝時間別の肥満率を調査した結果なのですが、9歳から16歳の青年を対象に睡眠時間や起床時間などを比較したところ、夜型に近い生活をしている群の青年はBMIの値が高いことが分かっています(※4)。しかも驚くことに、朝型に比べ、夜型の生活は過体重になる可能性が47倍も高く、実際の肥満率も2倍以上なのだとか。また、一人っ子や経済的不安を持つ家庭ほど子供が夜型になる確率が上がるということで、親御さんは注意が必要です。別の調査では、夜型から朝型に生活を変えることで体重が減少したという結果も出ています(※5)。当然、しっかりと睡眠時間を確保するという条件付きですが、ダイエットに勤しむ方は生活のリズムを変えることが第一であることを知るのも重要です。しかもしかも、しっかりとした睡眠リズムのない人ほどジャンク食を食べがちなんてこともチラホラと聞こえてきます。ダイエットはまず生活の改善から…
病気リスクの低下
近年、睡眠のタイミングは病気にも関わっているとされています。慢性的な疾患を対象に睡眠のタイプ別に調査を行ったところ、朝型に比べ夜型の人は心臓の疾患に関するリスクが高かったのだとか(※6)。胆石や肺疾患に関しても多少のリスクが伴うようで、早寝早起きが病気リスクを下げるのは事実のようです。また糖尿病のリスクに関しても夜型の方が高いとされることもあり注意が必要です。
睡眠タイプ別の病気リスクについては、まだ様々な議論がされている途中なのですが、どうやら健康面に多少なりとも影響はあるようです。
疲労感の低下
実際に病気になってしまうと、人は余計に疲労感を感じてしまうものです。こちらはガンの患者さんを対象に睡眠のタイミング別の疲労度を評価した結果なのですが、朝型の患者さんは夜型の方に比べ、生存率・幸福度から疲労度まで、あらゆる値が高かったことが分かっています(※7)。その結果は就寝時間別で本当に顕著で、時間が遅くスライドすればするほど評価は悪くなります。当然これは一般の方にも言えることで、スポーツ選手に早寝早起きを求める理由でもあります。体の疲れを抜きたければ早く寝て早く起きる。どうやらこれは正しい考えのようです♪
喫煙率が減る!?
アナタがタバコを吸っている原因の一つが、もしかすると朝型でないからかもしれません。睡眠のタイプ別で健康にまつわる行動や生活の質を調査したところ、夜型の人ほど喫煙率が高く、不規則な食事、カフェインの消費量などが高く、生活の質が低いことが明らかになりました(※8)。前述したように、精神的な安定が得られないことに根本的な原因があるのかもしれませんが、夜型の人ほど荒んだ生活を送る傾向があるのは否めません。おおよそイメージ通りといったところでしょうか^^;
「子供が生まれたから禁煙しよう!」なんてよく聞く話ですが、まずは寝る時間から改めてみるのが良いかもしれませんね♪
早起きに目的を伴うと睡眠の質を損なう!?
早寝早起きも、ある条件が重なると健康効果がなくなってしまうかもしれません。もし早起きに仕事やスポーツの練習などの明確な理由がある場合、睡眠の質が上がらない可能性があります。
残念ながら人間は、寝る時間を簡単に変えられません。眠る時間を確保できたからといって、朝から仕事や練習を画策したところで成果は上がらないということです。それを裏付けるように、スウェーデンで発表された早朝の仕事と睡眠に関する報告の中で、早期の仕事開始は早期の就寝では補償できなかったと結論付けられています(※9)。経営者などが、「だったら早く寝て早く仕事しろ!」と言いがちですが、そこまで単純なものではないということです。余裕を持った早寝早起きで、始めて日常の生活に豊かさが保たれる。これが教訓です。
また、これと同じくアスリートを対象とした早朝練習と睡眠に関する調査の中でも、早朝の練習は睡眠時間の短縮や疲労度のレベルを上げてしまうという結論を出しています(※10)。重要なのは日頃から朝型のリズムを作ることで、朝早く起きて行動を起こすことではありません。簡単に言うと、早く起きることに「目的」を置くべきではないと言うこと。なかなか深いですね♪
早寝早起きは子孫繁栄を損なう!?
こちらは今の日本にとって、とても重要なデメリットかもしれません。健康面において早寝早起きはメリットばかりですが、驚くことに子孫繁栄に関しては大きなデメリットと言わざるを得ません。
考えていただければ当然なのですが、朝型の生活は、夜型の生活に比べ男女の接触の機会が減ってしまうという寂しい事実があります。しかも女性は、歳を重ねるごとに出会いが減り、子孫繁栄という点について語る場合、大きなポイントとなるのは明らかです。残念ながら、男女の仲は昼間より夜です^^;
人類学や動物学上も同様のデメリットとして受け入れなくてはならない大きなデメリットです。早寝早起きは健康にとって重要ですが、時には夜更かしをじさないのも手かもしれませんね♪
でもちょっと待って! 実は一つ注意点
「だったら私も朝型になろう!」と思われた方もいることでしょう。ただ微妙なことに、実は根本的な睡眠のタイプは50%が遺伝で決まっているとされています(俗にクロノタイプと呼ばれるものですね)。簡単に言うと、「生まれながら遺伝的に夜型の人が存在する」ということ。様々な説はありますが、おおよその割合は朝型が4割強、中間型が4割強、夜型が2割弱とされていて、夜型に該当する2割の方が朝型の生活をするのは、そもそも困難であると言えます。
「朝型」の人は苦もなくできることが、「夜型」の人には苦痛。残念ながら、これは変えられない個々の性質です。ですからもし夜型の方が朝型を目指すのであれば、「それなりの努力」が必要となります。変えられないものを変えるのですから当然です。
・早めに起きる努力
・簡単に諦めない継続力
もちろん、性質ですから諦めてしまえばすぐ夜型に戻ってしまいます。なかなか難しいですが、人間は慣れる生物です。しっかりとリズムを作り生活を続けることで苦痛は減ります。「そういうものだ」と割り切って、朝型に近づけた生活を送るのが重要です。
アナタの周りにも、どうしても朝が弱い方がいるはずです。ただの夜更かしによる自業自得ならば問題外ですが、そうでなければ少し優しくしてあげましょう。彼は彼なり、彼女は彼女なりに努力しているのかもしれません♪
まとめ
「早起きは三文の徳」とはよく言ったもので、確かに朝型の生活は人を健康にするかもしれません。ただそこに目的を持ってしまうと、本来の健康効果は得られないかもしれません。要注意です。
何事も程度が肝心です。固執せず、頑張りすぎると長続きしません。自分に可能なラインを探し、より健康的な生活リズムを作るのが重要ですよ♪
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参考文献
※2) :Jabeen, S. (2013). Delayed sleep phase syndrome: a forerunner of psychiatric distress. J Coll Physicians Surg Pak, 23(12), 874-7.
※3) :Escribano, C., Díaz-Morales, J. F., Delgado, P., & Collado, M. J. (2012). Morningness/eveningness and school performance among Spanish adolescents: Further evidence. Learning and Individual Differences, 22(3), 409-413.
※4) :Olds, T. S., Maher, C. A., & Matricciani, L. (2011). Sleep duration or bedtime? Exploring the relationship between sleep habits and weight status and activity patterns. Sleep, 34(10), 1299-1307.
※5) :Ross, K. M., Thomas, J. G., & Wing, R. R. (2016). Successful weight loss maintenance associated with morning chronotype and better sleep quality. Journal of behavioral medicine, 39(3), 465-471.
※6) :Basnet, S., Merikanto, I., Lahti, T., Männistö, S., Laatikainen, T., Vartiainen, E., & Partonen, T. (2017). Associations of common noncommunicable medical conditions and chronic diseases with chronotype in a population-based health examination study. Chronobiology international, 34(4), 462-470.
※7) :Palesh, O., Packer, M. M., George, H., Koopman, C., & Innominato, P. F. (2016). Associations between morning–evening chronotype, fatigue, and QOL in breast cancer survivors.
※8) :Suh, S., Yang, H. C., Kim, N., Yu, J. H., Choi, S., Yun, C. H., & Shin, C. (2017). Chronotype differences in health behaviors and health-related quality of life: a population-based study among aged and older adults. Behavioral sleep medicine, 15(5), 361-376.
※9) :Åkerstedt, T., Kecklund, G., & Selén, J. (2010). Early morning work—prevalence and relation to sleep/wake problems: a national representative survey. Chronobiology international, 27(5), 975-986.
※10) :Sargent, C., Lastella, M., Halson, S. L., & Roach, G. D. (2014). The impact of training schedules on the sleep and fatigue of elite athletes. Chronobiology International, 31(10), 1160-1168.
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