歯周病は大きな病気のサイン!? 知っておくべき健康との関連性
皆さんは歯周病について考えたことがありますか? 細菌感染によって歯と歯肉の境目に炎症を起こす病気です。今や30代の3人に2人が歯周病を患っていると言われていて、症状が進むと最悪の場合は歯を失うことになる恐い病気なのですが、いかんせん進行が遅く痛みがほとんどない疾患のため、人々はそのまま放置しがちです。
ただこの歯周病、それ自体も問題なのですが、実はその裏に別の原因が隠れていることも多いことで知られています。今回は歯周病にまつわる健康の話をしてみたいと思います。
歯周病は大きな疾患の隠れ蓑!?
ここ20年ほどで歯周病に関する研究が大幅に進み、症状を抑える治療法が大きく進歩しました。今や治療が可能な疾患となったわけですが、世界中の人々はおかしなほど歯の治療が大嫌いです。
(歯にまつわる話はこちら)
だからこそ、歯周病も多くの人が放置してしまう現実があります。しかし近年、歯周病は様々な病気に関連しているのではないかという研究結果が多数出され、注目を浴びています。今回は9個にわけ、それぞれを説明してみたいと思います。
2.裏に脳血管疾患が隠れている?
3.心血管疾患リスクはすぐそこに…
4.骨粗しょう症と歯周病は相関関係にある
5.呼吸器の異常は歯周病のせい?
6.歯周病はビタミン不足のサイン!?
7.歯周病は肥満の元?
8.歯周病と妊娠
9.歯周病は神経にも影響を与える
糖尿病と深い関わりが?
歯周病と病気の繋がりを語る上で、最も一般的な病気が糖尿病です。何より、歯周病は糖尿病の合併症の一つとして数えられていて、糖尿病と歯周病の有病率・重症度は一貫性のあるデータとして幾つもの証拠が提出されています(※1)。簡単に言えば、『歯周病の重症度と糖尿病の重症度は比例する』ということ。当然逆も然りで、歯周病が改善すると糖尿病も改善するというのはデータからも明らかです。一般的に糖尿病になると、唾液内のグルコース濃度が増えるといわれていて、これが歯周病の一因になっているとされています。糖尿病患者さんが歯周病にかかるリスクは、そうでない方々の約3倍。
・最近、歯茎の色が赤いな
・最近、口が粘つくな
・歯を磨くと血が出るんだけど
こんな症状のある不摂生なお父さん、お母さん。もしかすると、裏には糖尿病が隠れているかもしれませんよ?
裏に脳血管疾患が隠れている?
歯周病が脳血管の障害に繋がる可能性が近年話題になっています。歯周病の患者さんを対象に行われた調査によると、歯周病や歯肉炎といった疾患を持つ人は、脳卒中のリスクが2倍程度まで上がる可能性を指摘しています(※2)。
たかが2倍と思うなかれ、これはとても大きな問題です。年間に脳血管の障害で亡くなる方は、全体の約8%。これは病気における死因の第4位にあたります。年間10万人もの方々が無くなっている現実を知れば、この2倍という数字の意味を知っていただけると思います。たかが歯周病と侮ることなかれ…
心血管疾患リスクはすぐそこに…
歯周病は心臓にまつわる病気との関連性も多く明らかになっています。歯周病における炎症により作られるスタチンという物質が動脈中に脂肪を吸着させることが分かっていて、結果的に心臓の血管が詰まるという訳です。そのほかにも、歯周病を持つ口内で発生する細菌が心内膜炎(心臓の感染症です)を誘発する可能性も指摘されており、日頃の口内環境を保つ必要性が言われています(※3)。
こちらも脳疾患同様、とても高い死亡率の病気です。覚えておいて損はありません。
骨粗しょう症と歯周病は相関関係にある
こちらは主に女性が気にするべき疾患、骨粗しょう症、いわゆる骨がもろくなる病気ですね。この病気を発症するのが90%以上女性とされていて、高齢の女性の多く(一説には60歳以上のほとんど女性)が該当しているとされています。一般的に閉経後のホルモンバランスの崩れから一気に症状が進むとされているため、他人事ではないのですが、こちらの病気にも歯周病が一役買っていると言われています(※4)。
原因の一つと言われているのがエストロゲンと呼ばれる女性ホルモン(女性の体を作る要素)の低下で、これが落ちると骨密度と共に歯周病が進むとされています(歯を支えているのはもちろん骨ですからね)。歯と歯茎の間に歯周ポケットなどが生まれるのも一因とされていますが、これらが複合的に合わさって歯周病が進むという感じ。だから歳を重ねた女性の歯周病の裏には、骨粗しょう症が隠れている可能性が高いのです。
呼吸器の異常は歯周病のせい?
まだあるの?と言われそうですが、まだまだあるんです。
歯周病は慢性的な肺疾患との関連性も指摘されていて、歯周病を患った方の肺疾患、気管支炎、肺気腫といった病気のリスクが増すことがわかっています(※5)。こちらは歯周病だけでなく、口内環境も一因とされているため一概に歯周病だけが原因とは言えませんが、関係ないはずはありません。何より、より口に近い呼吸器が影響を受けないと考えるほうが難しいのではないでしょうか?
歯周病はビタミン不足のサイン!?
歯周病は何も大きな病気だけが関連しているわけではありません。中でも最近明らかになったのは、歯周病とビタミン不足が関連性を持っている点です(※6)。
歯周病の患者さんを対象にした調査の結果、ビタミンA、B1、C、E、鉄、葉酸、リンといったビタミンが不足した患者さんと歯周病の重篤さが比例することが明らかになっていて、これらビタミンの摂取が低い人ほど歯周病リスクが高まるのは一目瞭然です。食べ物が偏りがちな現代特有の結果とも言えますが、やはりバランスの良い食事が健康を生み出すのは否定できませんね♪
歯周病は肥満の元?
先に歯周病は糖尿病の合併症であると紹介しましたが、全てが糖尿病のせいではないことも紹介しておきましょう。糖尿病でない女性を対象に口内の細菌環境を調査したところ、肥満の女性、かつ歯周病を持つ方の口内は細菌有病率が極めて高かったとの結果が出ています(※7)。こちら、痩せた女性と肥満女性を直接比べていて、肥満女性ほどやはり歯周病率も高かったとか。糖尿病までいかずとも、歯周病率は高いという事実はポイントとしてとても重要です。
歯周病と妊娠
歯周病と妊娠については、歯についてまとめたこちらのコラムをどうぞ。
歯周病は神経にも影響を与える
まだまだいきます。歯周病は人間の神経の機能構造まで変えてしまう可能性が指摘されています。アルツハイマー、パーキンソン病など、神経機能の変化により発生する病気の原因として、実は歯周病が関連するという研究結果が発表され話題になりましたが、どうやら歯周病の炎症反応により発生する微生物や細菌は、とんでもない不健康能力を保持しているようです(※8)。
まとめ
いかがだったでしょうか。
歯周病の裏に隠れた病気、どれも恐いものばかりであることが分かっていいただけたと思います。毎日ちゃんと歯を磨いていても、歯周病は進行してしまいます。ですから定期的なお医者さんでの診断はとても重要なんですね。
「今度の休み、何しよう?」
なんて考えてる、そこのあなた。
たまには歯のケアでもしてみませんか?
きっとワンランク上の生活が得られると思いますよ♪
健康は意識から!
あなたも今日から健康、はじめてみませんか?
参考文献
※2) :Wu, T., Trevisan, M., Genco, R. J., Dorn, J. P., Falkner, K. L., & Sempos, C. T. (2000). Periodontal disease and risk of cerebrovascular disease: the first national health and nutrition examination survey and its follow-up study. Archives of Internal Medicine, 160(18), 2749-2755.
※3) :Carinci, F., Martinelli, M., Contaldo, M., Santoro, R., Pezzetti, F., Lauritano, D., … & Tettamanti, L. (2018). Focus on periodontal disease and development of endocarditis. Journal of biological regulators and homeostatic agents, 32(2 Suppl. 1), 143-147.
※4) :Mashalkar, V. N., Suragimath, G., Zope, S. A., & Varma, S. A. (2018). A Cross-Sectional Study to Assess and Correlate Osteoporosis and Periodontitis among Postmenopausal Women: A Dual Energy X-Ray Absorptiometry Study. Journal of mid-life health, 9(1), 2.
※5) :Scannapieco, F. A., & Ho, A. W. (2001). Potential associations between chronic respiratory disease and periodontal disease: analysis of National Health and Nutrition Examination Survey III. Journal of periodontology, 72(1), 50-56.
※6) :Luo, P. P., Xu, H. S., Chen, Y. W., & Wu, S. P. (2018). Periodontal disease severity is associated with micronutrient intake. Australian dental journal.
※7) :Silva‐Boghossian, C. M., Cesário, P. C., Leão, A. T. T., & Colombo, A. P. V. (2018). Subgingival microbial profile of obese women with periodontal disease. Journal of periodontology, 89(2), 186-194.
※8) :Ranjan, R., Dhar, G., Sahu, S., Nayak, N., & Mishra, M. (2018). Periodontal Disease and Neurodegeneration: The Possible Pathway and Contribution from Periodontal Infections. Journal of Clinical & Diagnostic Research, 12(1).
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