愛くるしいワンちゃんや可愛らしいネコちゃん。そんなペットと暮らすのは本当に健康的なのか?
皆さんもペットを飼っていますか?
可愛らしいワンコやネコに癒やされながら日々過ごしている方も多いと思います。今や全世帯の約10分の1の方々がイヌかネコを飼っている時代です。どれだけ身近な存在かなど、いまさら説明する理由もありません。しかしここ20年ほどで爆発的に増えたペットの数に対し、皆さんはペットに関わるご自身の健康についてあまり関心がありません。可愛い可愛いと溺愛するのは当然構いません。が、あまりに無関心なのは困ります。ということで今回は、様々なペットを飼う上で起こるメリット・デメリットについて触れてみたいと思います。
人々がペットを飼う意味は?
人間がペットを飼う意味は様々です。古来よりは狩猟や番犬、人間の補助役として飼われてきましたが、最近では子供の教育のためであったり、寂しさを紛らすためであったり、単純に可愛らしさからだったり、その存在意義は様々です。しかしどうでしょう、健康のためにペットを飼っている方はどれくらいいるでしょうか? 恐らくほとんどいらっしゃらないでしょう。
基本的にペットを扱う上で説明されるのは、「ペットを飼うメリット」ばかりです。最近では無責任にペットを放棄する人の数や、ペットを失うこと(いわゆるペットロス)による精神的ストレスが扱われることも増えましたが、健康的なデメリットについてあまり触れられていません。ですからここでは、ペットを飼う上での良い点、悪い点を列挙し、皆さんの健康について考えてみたいと思います。
ペットを飼う健康的メリットは?
ペットも種類は様々です。イヌ、ネコから始まり、ウサギ、ハムスター、ブタ、カメ鳥、魚類などなど、趣味趣向に合わせた多様な品種が揃っています。あまりに稀な動物のメリットは正直なところわかりませんが、一般的なペットを飼う上でのメリットを挙げてみます。
1.ストレス値の低下
動物を飼う最大のメリットはストレスの軽減です。ペットを飼い6か月間後のストレス値を計測したところ、ストレス反応値が減少することがわかっています。あまりに有名なメリットですので、詳細は割愛。
◆他にもこんなストレス解消法が!
→ 可愛いペットと一緒に森林浴などいかがですか?
2.血圧の低下
ストレス反応低下と共に言われることが多いメリット、それが血圧の低下です。高血圧を持つ患者さんを対象にした調査で、6ヶ月間ペットを飼ったグループは血圧が低下したというデータが出ています(※1)。難しい話をすれば、腎臓から分泌されるレニン(血圧を上げるための酵素です)の量が変化するのですが、ストレスが腎臓機能にまで影響を及ぼすのが数値でわかるのは面白いですね。血圧が気になる方は、レニンについて調べてみると、自分がどうするべきかがわかるかもしれませんよ → レニンについて
3.心臓疾患リスクの低下
血圧低下からも想像できますが、実はペットは心疾患のリスクを減らすことも知られています。不整脈治療を行っている患者さんを対象にした調査によると、ペットを飼っている人は、1年後死亡率の値が有意に低かったのだとか(※1)。また中国で発表された調査結果によれば、ペットを飼っている年数も死亡率に比例することがわかっており(対象はイヌ)、確実に効果があることがわかります(※2)。
4.アトピー・アレルギーのリスク低下
イギリスで行われた喘息やアトピーに関する調査によると、7歳の子供を対象に、ペット所有によるアトピー性喘息の羅患率を調べたところ、52%も値が低下したそう(※3)。また18歳時点でのアレルギー耐性の統計によると、ペットを育てている家庭に育つほどアレルギーリスクが軽減することもわかっています。ただ、実は同じようなデメリットも言われています。そちらはデメリットにて…
5.行動機会の増加
主に散歩を必要とするペット(イヌ等)を飼うと、身体的な活動を取る確立が上がることがわかっています。そりゃあ、ペットだって自分で動き回りたいですし、飼い主さんもペットの散歩やエサを飼う機会など増えますし、同じペットを飼う方々との交流もできますから、当然と言えば当然ですね♪
6.子供の精神的健康に良い
実はペットと子供に関する研究は多く、そのほとんどが子供の精神衛生上の部分を改善するとしています(※4)。これらは自宅にペットがいるだけで良く、子供の不安感や孤独感の軽減、肥満解消にまで繋がるとされています。ちなみにペットの種類は幅広くて、小さな昆虫でも効果があるそうで。親御さんも一緒になって育てることで、日頃の子供のストレス解消に繋がるかもしれませんね♪
◆子供の健康は大人が守るものです!
→ 子供の健康リスクについて、ちゃんと考えていますか?
7.孤独軽減効果
孤独は現代社会の大きな問題です。そして孤独は早期死亡率を上げる大きな原因ともなります。そんな孤独の解消に、ペットが有効であることがわかっています。簡単な話ではありますが、60歳以上の一人暮らしの方を対象にした調査によると、ペットとの同居が幸福度やQOL(クオリティ・オブ・ライフ)を上げてくれるようです(※5)。確かに、誰からも反応がないというのは辛いものです。しかしペットがいるだけで、少しはその寂しさが解消できるのであれば、ペットを飼う意味もあるかもしれませんね♪
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ペットを飼う健康的デメリットは?
物事は表裏一体、良い部分があれば必ず悪いところも存在します。メリットと同じく、一般的なペットを飼う上でのデメリットを挙げてみます。
1.骨折するリスクが増加
アメリカの高齢者を対象にした調査結果ですが、ペットのイヌやネコが原因となる怪我が年間86000件以上起こり、高齢者の骨折が問題になるケースがあるとのこと(※1)。イヌやネコの元気さに比べ、高齢者の方々が全員元気であるとは限りません。素早い動きや行動が困難な場合もあり、ペットを飼う際には、怪我に対する十分な注意が必要です。
◆骨のリスクを舐めていると痛い目にあいます
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2.非アトピー性リスクが増加
メリットの項目でアトピーリスクの低下を書きましたが、実は反対にアトピーを伴わない喘息のリスクが上がることがわかっています(※3)。アトピーによる喘息は防げても、アトピーの関係ない喘息のリスクは上がってしまうという、プラマイ0な結果となっています。ただ、こちらも動物によって違いがあるようで、ウサギなどのげっ歯類は非アトピー性の喘息リスクが高かったのだとか。飼う・飼わないのどちらを選択するかは、それぞれの家庭の判断にゆだねるという結論になりそうです。
3.清潔度の低下
当然ですが、動物は人間と清潔に関する意識が異なります。中でも動物が持っているダニによる健康リスクは大きいと言われていて、近年ではダニ媒介による病気が取り沙汰されることもありました(※6)。実はダニは外を歩くだけで媒介することがわかっていて、しっかりとした処置をしないと、ペットだけでなく飼い主さん諸共、健康被害を被る可能性も。そのリスクたるやペットのいない家庭と比べ約1.5倍(※9)。お医者さんに定期的に相談するなど対策は必須です。
4.喫煙率の増加
ここで意外なデータを一つ。ペットを飼っている人と、そうでない人を比較したHarold Herzog氏のビッグデータ情報(※7)によると、ペットを飼っている人ほど煙草を多く吸っていたのだそう。随分昔にペットを飼うことがガンになる確立を上げるというデータが発表されたのですが、今ではペットを飼うことによるガンリスクは関連していないことがわかっています。こういったデータも相まって、ガンの確立を上げるなんてデータが広まったのかもしれませんね。
◆喫煙に伴う噂も合わせてご覧ください
→ 喫煙が与える影響は肺だけじゃない!?
5.運動機会の低下とBMI増加
こちらもビックリなデータです。驚くことにペットを飼うことで行動の機会は増えるのですが、実は運動する機会が減り、しかもBMIの値は増加しているのだそう(※7)。こちらはペットの散歩などで健康になるというデータを真っ向から切り捨てていて、とても面白いものとなっています。細かく言うと、ちゃんと散歩など行動的に動いている方はBMIが下がるのですが、そうでない飼い主さんは逆に太るのだそう。こちらは別の調査結果でも明らかになっていて、イヌを対象にしたデータによると、散歩が特に好きでない子を飼っている飼い主さんほど太るそうです(※8)。だらけてばかりいるイヌを飼っている、そこのあなた。注意が必要です。
6.ペットロスによる精神的ストレス
始めにも書きましたが、ペットは失うリスクがあるというのも大きなデメリットです。ペットロスの度合いは人によりますが、これが原因で大きな心理的損失を受ける方も多いのが現実。お子さんの情操教育には有効ですが、ペットが一家族であることもあらかじめ考慮して飼うことが重要です。私自身もペットと同じ時間を過ごした経験がありますが、その喪失感は計り知れません。ただ可愛いという感情だけで飼うのではなく、命ある生き物であると認識することが重要です。
7.金銭的不安
デメリット最大の闇、それはお金です。意外でも何でもありませんが、ペットを育てるにはお金が必要です。イヌ一頭あたりにかかる生涯費用はおよそ百万円強とされていて、実は何も知らずに飼い始める方が多いのも事実。大型犬や大型のペットを飼う人の中には、「こんなに食費やケア代が掛かるなんて」と頭を抱える人も多いといいます。事前の準備や予備知識もなくペットを飼う人の浅はかさなど知ったことではありませんが、金銭的余裕がある人でなければ、ペットは不安やストレスの元になることも知っておくことが重要です。その代償としてペットを放棄するような人間に、健康を気にする権利はないことも付け加えておきます。
まとめ
今回はペットのメリット・デメリットについて触れてみましたが、いかがでしたでしょうか。皆さんの中にも可愛らしいペットと日々を過ごす方がいらっしゃると思いますが、時にはしっかりと考えてみることも重要です。デメリットも幾つか書かせていただきましたが、どれも気をつければ回避できるものばかりです。しっかりと予防し、ペットとの楽しい時間をお過ごしいただければ幸いです♪
運動不足で悩んでいる動物好きの皆さん。
この機会に乗馬などいかがでしょうか。
飼うのもいいですが、たまに触れるのも良いものですよ。
健康は意識から!
あなたも今日から健康、はじめてみませんか?
参考文献
※2) :Xie, Z. Y., Zhao, D., Chen, B. R., Wang, Y. N., Ma, Y., Shi, H. J., … & Wang, L. S. (2017). Association between pet ownership and coronary artery disease in a Chinese population. Medicine, 96(13).
※3) :Collin, S. M., Granell, R., Westgarth, C., Murray, J., Paul, E., Sterne, J. A. C., & John Henderson, A. (2015). Pet ownership is associated with increased risk of non‐atopic asthma and reduced risk of atopy in childhood: findings from a UK birth cohort. Clinical & Experimental Allergy, 45(1), 200-210.
※4) :Gadomski, A. M., Scribani, M. B., Krupa, N., Jenkins, P., Nagykaldi, Z., & Olson, A. L. (2015). Peer Reviewed: Pet Dogs and Children’s Health: Opportunities for Chronic Disease Prevention?. Preventing chronic disease, 12.
※5) :Stanley, I. H., Conwell, Y., Bowen, C., & Van Orden, K. A. (2014). Pet ownership may attenuate loneliness among older adult primary care patients who live alone. Aging & mental health, 18(3), 394-399.
※6) :Jones, E. H., Hinckley, A. F., Hook, S. A., Meek, J. I., Backenson, B., Kugeler, K. J., & Feldman, K. A. (2018). Pet ownership increases human risk of encountering ticks. Zoonoses and public health, 65(1), 74-79.
※7) :Herzog、H.(2016)。ペットの所有者は本当にがんのリスクが高いですか?
※8) :Clower, T. L., & Neaves, T. T. (2015). The health care cost savings of pet ownership. Human Animal Bond Research Initiative (HABRI), Washington, DC, USA, 1-12.
※9) :Jones, E. H., Hinckley, A. F., Hook, S. A., Meek, J. I., Backenson, B., Kugeler, K. J., & Feldman, K. A. (2018). Pet ownership increases human risk of encountering ticks. Zoonoses and public health, 65(1), 74-79.
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